革という素材には、時間とともに表情を変えていく魅力があります。 使う人の手に馴染み、傷や色の変化さえも「味」として刻まれていく存在です。
今回は、アフリカの広大な湖、ヴィクトリア湖からやってきた、ユニークな「ナイルパーチ革」について、その素材が持つ背景や、私たちがこの再生の物語とどう向き合っているのかをお話ししていきます。
なぜ、湖の革なのか
ナイルパーチは、アフリカのヴィクトリア湖に生息する、巨大な淡水魚です。その大きな体は、現地の人々にとって貴重な食料資源となっています。しかし、その皮は、かつてはほとんどが廃棄されていました。
アルズニがこの革に注目したのは、そのユニークな見た目だけではありません。本来であれば捨てられてしまうはずだったものに、新たな価値を見出し、美しい製品として生まれ変わらせること。それは、資源を大切にし、環境への負荷を減らすという、現代のものづくりにおいて非常に重要な考え方です。この「再生の物語」こそ、ナイルパーチ革が持つ、最も大きな価値であると私たちは考えています。
ナイルパーチ革だけが持つ、大地の息吹
ナイルパーチ革の個性は、その独特のテクスチャーにあります。その表面は、まるで乾いた大地や、樹皮のようにも見える、深く、不規則な溝で覆われています。一枚として同じ模様はなく、その表情は、雄大なアフリカの大自然そのものを感じさせます。
手に取ると、その凹凸が指先に心地よい刺激を与え、見た目のワイルドさとは裏腹に、しなやかで軽いことに驚かされるでしょう。この「大地の息吹」を感じさせる見た目と、「軽快な使い心地」というギャップ。それこそが、ナイルパーチ革が持つ、不思議な魅力なのです。
アルズニとナイルパーチ革の向き合い方
廃棄されるものに、新たな生命を
私たちは、ナイルパーチ革を扱うことを通じて、サステナブル(持続可能)なものづくりの可能性を追求しています。食用の魚から得られる副産物である皮を、価値ある革製品として再生させる。この取り組みは、現地の漁業コミュニティに新たな収入源をもたらし、経済的な自立を支援することにも繋がっています。
一つの素材が、食料となり、そしてその皮が美しい製品として生まれ変わる。その循環の中に、私たちも参加できること。それは、作り手として、大きな喜びと誇りを感じる瞬間です。
大地の模様を、デザインに活かす
製作の現場では、ナイルパーチ革が持つ、不規則でダイナミックな模様を、いかにデザインに活かすかを常に考えています。その溝の深さや流れは、一枚一枚、全く異なります。職人たちは、その革が持つ「景色」を読み取り、製品にしたときに最もその魅力が引き立つ部分を、慎重に選び抜きます。
ワイルドな表情をそのまま活かして大胆なデザインのバッグにすることもあれば、比較的模様が穏やかな部分を選んで、財布や小物のアクセントとして使うこともあります。その革の個性と対話し、最適な役割を与えること。それが、職人の腕の見せ所です。
持ち主と共に、変化を楽しむ
ナイルパーチ革は、使い込むほどに、その表情を豊かに変化させていきます。最初はマットな質感が、徐々に摩擦によって磨かれ、自然な光沢を帯びてきます。色は深みを増し、凹凸のある表面は、より立体的で、陰影に富んだ表情を見せるようになります。
他の革とは一味違う、このダイナミックな経年変化。それは、まるで持ち主と共に、アフリカの大地を旅しているかのような、冒険心あふれる楽しみを、日常にもたらしてくれるでしょう。
まとめ
ナイルパーチ革は、単なる珍しい革ではありません。それは、ナイルの恵みと、再生の物語、そしてアフリカの大地の息吹を宿した、サステナブルな素材です。
アルズニは、これからも、このような環境や社会に配慮した素材を積極的に取り入れ、その価値を正しく伝えながら、持ち主の日常に、ささやかな冒険心と喜びを届けられるような製品を、作り続けていきます。