革という素材には、時間とともに表情を変えていく魅力があります。 使う人の手に馴染み、傷や色の変化さえも「味」として刻まれていく存在です。
今回は、アルズニのものづくりの根幹をなす「自社一貫体制」という考え方について、 それが単なるシステムではなく、私たちの哲学そのものである理由をお話ししていきます。
すべてに、責任を持つということ
多くのものが分業化され、効率が追求される現代において、「すべてを自分たちの手で行う」という選択は、時代に逆行しているように見えるかもしれません。アルズニが、素材の仕入れから、企画、製造、そしてお客様にお届けする販売まで、すべての工程を自社で一貫して行う理由は、効率のためではありません。
それは、私たちが世に送り出す製品の、その誕生からお客様の人生に寄り添う未来まで、そのすべてに責任を持ちたいという、極めてシンプルで、しかし揺るぎない想いがあるからです。それは、ものづくりに対する私たちの「覚悟」の表れでもあります。
一貫体制がもたらす、途切れない対話
自社一貫体制の個性は、その「途切れない対話」にあります。それは、部門間の連携という言葉では表しきれない、より有機的で、温かいものです。
世界中を旅するバイヤーは、目の前の革を見ながら、それがどのような製品になり、お客様の元でどう育っていくかを想像します。その想いは、企画者へと引き継がれ、デザイン画に落とし込まれます。そして職人は、そのデザイン画と革の声を聞きながら、自らの手で形にしていく。もし製造過程で新たな発見があれば、それはすぐに企画者やバイヤーにフィードバックされ、次のものづくりへと活かされていきます。
そして、店頭に立つスタッフは、その製品に込められたすべての物語をお客様に伝え、お客様の声を工房へと持ち帰る。この想いの連鎖、途切れることのない対話こそが、アルズニの製品に深い魂を吹き込んでいるのです。
なぜ、この非効率な道を歩むのか
「本物」であるための必然
もし私たちが、それぞれの工程を外部に委託すれば、もっと効率的に多くの製品を作ることができるかもしれません。しかし、それでは私たちの想いは、工程のどこかで途切れ、薄まってしまうでしょう。
バイヤーが「これだ」と惚れ込んだ革の個性を、職人が最大限に引き出す。お客様からいただいた「もっとこうだったら」という声を、次の企画に活かす。この当たり前のようでいて、実は非常に困難なことを実現するためには、すべての工程が自分たちの手の内にあることが絶対条件でした。自社一貫体制は、経営戦略として選んだのではなく、「本物」を追求するための必然的な帰結だったのです。
揺るぎない品質への約束
アルズニのすべての製品には、私たちの目が隅々まで行き届いています。どの国の、どのタンナーが鞣した革で、どの職人が、どのような想いを込めて作り上げたのか。そのすべてを、私たちは語ることができます。
この透明性とトレーサビリティは、お客様に対する「品質」への揺るぎない約束です。万が一、製品に問題があった場合でも、私たちはその原因を究明し、改善することができる。自分たちで全責任を負うという覚悟が、品質への一切の妥協を許さない姿勢を生み出しているのです。
変化に、真摯であるために
お客様のライフスタイルや価値観は、時代と共に変化します。その繊細な変化を感じ取り、ものづくりに反映させることができるのも、お客様と直接対話できる販売の現場を持ち、それをすぐに形にできる企画・製造の現場を持っているからです。
私たちは、流行を追いかけることはしません。しかし、時代の空気や人々の想いの変化には、常に真摯でありたいと考えています。自社一貫体制は、変わらない哲学を守りながら、同時に誠実な変化を続けるための、強靭な背骨でもあるのです。
まとめ
アルズニの自社一貫体制は、単なる生産システムではありません。それは、一つの製品に込められた想いを、決して途切れさせることなく、お客様の元へとお届けするための、私たちの哲学そのものです。
アルズニは、これからも、この非効率で、正直な道を歩み続けます。その先にこそ、お客様の人生の「相棒」となりうる、本物の価値が生まれると信じているからです。