ALZUNI BLOG
ALZUNI BLOG

革の経年変化:あなただけの物語を刻むということ

革という素材には、時間とともに表情を変えていく魅力があります。 使う人の手に馴染み、傷や色の変化さえも「味」として刻まれていく存在です。

今回は、アルズニが最も大切にしている価値観の一つである「革の経年変化」について、 なぜ私たちは時間に逆らうのではなく、時間と共に深まる美しさを愛するのか、その考え方をお話ししていきます。

なぜ、新しいままではいけないのか

現代の多くの製品は、買った瞬間が最も美しく、その後は劣化していくという宿命を持っています。しかし、良質な革製品は、その逆の道を辿ります。買った瞬間はまだ未完成であり、使い手の時間と記憶を吸い込むことで、初めて唯一無二の存在へと完成していくのです。

傷がつくこと、色が変わること。それは、決して「劣化」ではありません。それは、持ち主と共に過ごした時間の証であり、その人だけの物語が刻まれた、かけがえのない「勲章」です。私たちは、その傷や変化さえも美しいと感じる、豊かな価値観を大切にしたいと考えています。

時間が革に与える、魔法

革の経年変化は、主に三つの要素によってもたらされます。

一つ目は、持ち主の手の脂や、空気中の水分です。これらが革の繊維にゆっくりと浸透し、革を乾燥から守りながら、深い色合いと自然な光沢を生み出します。特に、植物のタンニンで鞣された革は、この変化が顕著に現れます。

二つ目は、太陽の光です。紫外線は、革の色を少しずつ変化させ、落ち着いた、深みのある色合いへと育てていきます。窓辺に置かれた革小物が、いつの間にか美しい飴色に変化している。そんな偶然の出会いも、革を育てる楽しみの一つです。

そして三つ目は、摩擦です。ポケットの中や、バッグの中で、日々少しずつ擦れることで、革の表面は磨かれ、滑らかな手触りと、美しい光沢が生まれます。それは、まるで川の流れが石を丸くしていくように、時間と物理的な力が生み出す、自然な造形美なのです。

アルズニと経年変化の向き合い方

変化を「デザイン」する

私たちは、ものづくりを始める段階から、その製品がどのように経年変化していくかを想像します。この革は、数年後にはこんな色合いになるだろう。この部分は、摩擦で美しい光沢が出るはずだ。その変化を前提として、デザインや素材選びを行っています。

例えば、アルズニが得意とする「厚革」。その厚みは、単に頑丈さのためだけではありません。厚い革は、その分、時間と記憶をたっぷりと吸い込むことができ、より深く、豊かな経年変化を見せてくれるのです。私たちは、その変化の「余白」を、あらかじめ製品に持たせているのです。

傷さえも、デザインの一部

私たちは、お客様に「傷を恐れずに、どんどん使ってください」とお伝えしています。もちろん、大きな傷や破損は修理が必要ですが、日常の中でつく細かな傷は、その製品の歴史の一部です。

その傷を見て、旅の思い出を振り返ったり、仕事での成功を思い出したり。傷の一つ一つが、持ち主の人生の断片を記録する、タイムカプセルのような役割を果たすのです。私たちは、そんな傷さえも愛おしく思えるような、大らかな気持ちで革製品と付き合ってほしいと願っています。

持ち主が、最後の仕上げをする

アルズニの製品は、私たちの手を離れた瞬間が完成ではありません。そこから先は、持ち主の手に委ねられます。

どんな環境で、どんな風に使われるのか。どんな手入れをされるのか。それによって、経年変化の進み方は、千差万別に変わっていきます。世界に一つだけの革製品を完成させる、最後の職人は、それを手にしたお客様自身なのです。その過程を楽しみ、自分だけの「作品」を育てていく。それこそが、革製品を持つことの、最大の喜びであると信じています。

まとめ

経年変化とは、単なる物理的な変化ではありません。それは、製品と持ち主が、共に時間を過ごし、一つの物語を紡いでいく、創造的なプロセスです。

アルズニは、これからも、時間に逆らうのではなく、時間と共に価値が深まるような、息の長いものづくりを続けていきます。そして、お客様一人ひとりが、自分だけの物語を革に刻んでいく、そのお手伝いができれば、これ以上の喜びはありません。

more insights