革という素材には、時間とともに表情を変えていく魅力があります。 使う人の手に馴染み、傷や色の変化さえも「味」として刻まれていく存在です。
今回は、古くから「海の宝石」と称され、多くの人々を魅了してきた「エイ革(スティングレイ/ガルーシャ)」について、その素材が持つ背景や、私たちがこの輝きとどう向き合っているのかをお話ししていきます。
なぜ、海の宝石と呼ばれるのか
エイ革の表面は、まるでガラスビーズを敷き詰めたかのように、硬く、きらきらと輝く小さな突起で覆われています。これは、人間の歯や骨と同じリン酸カルシウムでできた「楯鱗(じゅんりん)」と呼ばれるものです。この自然が生んだ神秘的な輝きこそ、エイ革が「海の宝石」と称される所以です。
アルズニがこの革に惹かれるのは、その見た目の美しさだけではありません。この楯鱗は、非常に硬く、傷がつきにくく、水にも強いという、革素材として驚くべき特性を備えています。その美しさと強さを兼ね備えた完璧な存在感は、私たちものづくりに携わる者にとって、尽きることのない挑戦意欲を掻き立てるのです。
エイ革だけが持つ、二つの表情
エイ革の個性は、その加工方法によって、全く異なる二つの表情を見せる点にあります。
一つは、表面の楯鱗をそのまま活かした、きらびやかな表情。光を浴びるたびに、無数の突起が乱反射し、まるで宝石箱のような輝きを放ちます。この加工は、エイ革本来の力強さと生命力を感じさせます。
もう一つは、その硬い楯鱗の表面を、職人が丹念に研磨し、滑らかに仕上げた表情。通称「キャビア」とも呼ばれるこの仕上げは、しっとりとした上品な光沢を放ち、まるで夜空に浮かぶ星々のような、静かで奥深い美しさを湛えています。こちらは、よりドレッシーで、洗練された印象を与えます。
この二つの異なる表情を、製品のデザインやコンセプトに合わせて使い分けること。それもまた、エイ革を扱う上での大きな楽しみの一つなのです。
アルズニとエイ革の向き合い方
「スターマーク」という、天からの贈り物
エイ革には、一匹に一箇所だけ、「スターマーク」と呼ばれる、ひときわ大きく、白い斑点状の部位が存在します。これは、エイが光を感知するための第三の目であったとも言われ、古くから「天眼」「神の目」として、幸運を呼ぶお守りとされてきました。
私たちは、このスターマークを、単なる模様としてではなく、その革が持つ「魂の宿る場所」として、最大限の敬意を払って扱います。製品の最も重要な位置にこのスターマークを配置することで、その製品が持ち主にとって特別な「お守り」となることを願っています。このスターマークをどこに、どう活かすか。それは、職人の腕と感性が見せ所となる、神聖な作業なのです。
宝石を削り出すような、緻密な作業
エイ革の加工は、他のどんな革とも異なります。その表面は非常に硬いため、通常の革包丁では刃が通りません。職人たちは、専用の道具を使い、まるで宝石を削り出すかのように、一点一点、慎重に革を裁断し、縫製していきます。
特に、表面を研磨して仕上げる「キャビア」加工は、熟練の技術と、途方もない手間と時間を要する作業です。しかし、私たちは、この困難な作業の先にある、唯一無二の美しい輝きを知っているからこそ、決して妥協することはありません。それは、ものづくりというよりも、むしろ一つの作品を彫り上げる彫刻家の仕事に近いのかもしれません。
永く続く、輝きと幸運
エイ革製品は、その硬さゆえに、ほとんど経年変化をしません。それは、持ち主との時間の中で表情を変えていく他の革とは、また違う価値観を持っています。いつまでも変わらないその輝きは、「永遠性」の象徴とも言えるでしょう。
アルズニのエイ革製品が、持ち主の人生という長い旅路において、変わることのない幸運の「お守り」として、その手元で静かに輝き続けること。それが、私たち作り手の、ささやかな願いです。
まとめ
エイ革は、単なる美しい素材ではありません。それは、海の神秘と、生命の強さ、そして幸運の物語を宿した、「海の宝石」です。
アルズニは、これからも、この特別な輝きと真摯に向き合い、その価値を最大限に引き出すことで、持ち主の人生に寄り添う「お守り」のような製品を、作り続けていきます。